最近は、居酒屋・ダイニングを中心に、看板商品やこだわりの食材を、サブ店名に掲げる店が増えた。以前は総合和食的な店が多かった居酒屋だが、昨今の時流としては、看板商品やこだわり食材を明確に打ち出している居酒屋が目立つ。
しかも、それが一つではなく、2つ掲げる店が多い。『海鮮・豆腐 ○○』、『串焼ともつ鍋 ○○』、『地鶏とそば ○○』、『豚肉料理と蒸し料理 ○○』といった具合だ。その背景には、2つ掲げることで業態の目新しさを打ち出し、ターゲットを広くとらえる戦略がある。
そうした中、今回、『よろずや食堂』が検討しているのが看板商品を“3つ”掲げるという戦略。これが多過ぎるかどうかと言えば、答えは「多過ぎではない」。看板商品を3つ掲げること自体は、有効な戦略として検討の余地がある。
特に最近は、看板商品をサブ店名に掲げる店が増え、看板商品が1つ、あるいは2つでは特徴を打ち出しにくくなってきた。基本的には、数を増やすよりも1つの看板商品で集客できるのが理想だが、それが難しいのがいまの時代だ。看板商品を増やす戦略は、方向として間違っているとは言えない。
実際、いま好調な居酒屋を見ると、「串揚げ・もつ煮・焼そば」というように、3つの看板商品を掲げている店も結構ある。
ただし、看板商品を増やす際には、しっかりとしたメニュー強化策が欠かせない。
看板商品として掲げる以上は、お客様に「これはおいしい!」と言ってもらえるレベルのものでなければならない。そのレベルを、3つすべてでクリアする必要がある。
さらに、看板商品として掲げる以上は、メニュー表やPOPの見せ方の工夫、調理シーンを見せる演出などで、お客様に「なるほど!これは看板商品だ」と視覚的にも納得してもらうことが大切。サブ店名に掲げたものの、お客様が実際に利用してみたら味のレベルは低いし、こだわりも伝わってこない…というのでは、不満足度を高めるだけだ。
また、複数の看板商品を掲げる場合は、その組み合わせ方も重要である。これは感覚的な要素も大きいが、『よろずや食堂』が考えた「串焼・から揚げ・マグロ丼」の組み合わせは、まったくダメとも言い切れないが、単なる思い付きのような感じがすることも否めない。
から揚げなどのトレンド料理を取り入れる発想は悪くないが、もう少し組み合わせる料理を検討した方がよいだろう。
地方都市の主要駅から徒歩20分のところにあるパーティーレストランF店は、年間延べ5万人のお客様が来店する。顧客名簿もパソコンで管理。登録顧客数は3000人にのぼっている。
しかし、店長のU氏が覚えているお客様の数はせいぜい数十名程度。名前を覚えるのが苦手なU氏は、手書きの顧客手帳を持つようにし、お客様の似顔絵を6回書くようにした。
さすがに似顔絵を6回も書けばU氏でも名前を覚えられるようになり、さらにお客様の食べたものや会話を思い出し、お客様の識別にも役立った。また、閉店後に顧客手帳を書いているU店長の姿を見て、スタッフの士気も向上している。
都心の繁華街にある居酒屋S店のサブ店名は「地鶏、豆腐、おでん」である。サブ店名に掲げるそれぞれの料理にしっかりとこだわり、多くの常連客を獲得している。
同時に、新規客の利用も多いのが特徴で、そのポイントの一つになっているのが、店頭の写真やPOPによるアピールだ。
S店の地鶏はブランド鶏で、豆腐は手作り、おでんは京おでんのおいしさにこだわる。同店では、これらの食材の写真や生産者、こだわりを伝える文章を写真やPOPで店頭に表示。「地鶏 豆腐 おでん」の木製の看板と一緒に表示して店頭でアピールしていることが、新規客の獲得につながっているのだ。
こだわりのおいしさと、店頭アピールの両方で強さを発揮している。