マッチングプラス

飲食店の多店舗展開マネジメント

11 新規出店時に起きる「時間差」のカベ
Profile 廣瀬 好伸(ひろせ よしのぶ)

公認会計士・税理士
株式会社ビーワンフード 代表取締役
飲食業に特化した「お金の専門家」として幅広くコンサルティングを行う。
飲食店経営者・店長向けに、セミナーや研修も数多く実施。
著書に『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』。

先を見越して、資金に余裕を持つ

方法 1

ケース3-2のように、工事が進むにつれて工事費が増えていくというケース、またはそれに似たケースで、工事に限らずその他の経費が増えていくというケースは発生の可能性が高いと思います。
そうならないように、融資の申込時には、「工事や経費の見積もりには余裕を持っておく」「漏れがないか、見積もりが甘くないかを何度も何度も確認する(外部専門家のチェックを受ける)」ということを行なった上で、融資の申込額を決める必要があります。

方法 2

手元資金で初期投資をしないということも必要です。
初期投資は融資・リース・割賦で調達し、手元資金はいざというときのために確保しておきましょう。
仮に、ケース3-2のように、融資確定後、追加の初期投資が必要になった場合でも、「他行から追加融資を受けることができないか」「追加投資分についてリースや割賦は利用できないか」といったことを検討するべきです。

方法 3

オープン直後から早速軌道に乗ってキャッシュ・フローがプラスで推移するのであれば問題ないのですが、「出店当初のキャッシュ・フローはマイナスだけれども、少しずつ認知もされリピーターもついてきてキャッシュ・フローがよくなっていく」というケースも多くあると思います。こういったケースに備えて、初期投資の融資を受ける際、初期投資の設備資金だけでなく、出店当初のキャッシュ・フローのマイナスを補う運転資金もあわせて調達してしまいましょう。
仮にこれをやらなかった場合は、オープン後に銀行に運転資金の融資申込をすることになると思いますが、オープン前に申し込むよりも融資審査のハードルが上がってしまう可能性が高くなります。
それに加えて、前回連載の「税金対策のカベ」でお話ししたとおり、過度な節税をしていると、こういったいざというときの融資審査のハードルがさらに上がってしまい、“余裕のない経営”になってしまうリスクがあります。

方法 4

ケース1や2はもしかしたら出店計画が甘すぎたのかもしれません。
未来に対する予測なので、もちろん計画通りに行くことのほうが少ないかもしれませんが、
たとえば、

  • ①手元資金はどれくらい余裕があるか
  • ②既存店舗のキャッシュ・フローはどうか
  • ③新店舗はどれくらい計画を下回れば①や②とのバランスを考慮して危険度が高くなるか

といった財務的視点で十分に検証すべきです。

このように、新規出店の際には、「オープンから軌道に乗るまでの期間=時間差」がカベとなって潜んでいます。
この新規出店の時間差のカベを乗り越えるためにはこういった「余裕資金の確保」がカギになります。