マッチングプラス

飲食店の多店舗展開マネジメント

05 だるま理論でお金のカベを乗り越える
Profile 廣瀬 好伸(ひろせ よしのぶ)

公認会計士・税理士
株式会社ビーワンフード 代表取締役
飲食業に特化した「お金の専門家」として幅広くコンサルティングを行う。
飲食店経営者・店長向けに、セミナーや研修も数多く実施。
著書に『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』。

財務基盤を強化する方法!?

財務基盤を築くために、まずは「お金を生み出す体制」をつくりましょう。
お金を生み出す方法としては、次のような方法が考えられます。

  1. 1. 飲食店を経営する中で得られる資金、つまり、お店で稼ぐお金。
  2. 2. 個人投資家やベンチャーキャピタルといったところから得られる資金、つまり、増資。
  3. 3. 金融機関、特に銀行から得られる資金、つまり、融資。

2はレアケースなのでここでは省くとして、財務基盤を築くために、まず「1. お店で稼ぐお金」を増やす方法があります。
これは第1回目の連載でもお話ししたデータ・マネジメントを活用して「売上を上げる/コストを下げる」ことでお店の収益性を高めることが必要です(「どんぶり勘定のカベ」)。
そして、それだけではダメで「キャッシュ・フロー経営」によってキャッシュ・フローを良くする、ということが必要です。
つまり、利益が出ていてもお金が増えていかなければ「稼いでいる」とは言えません。

このキャッシュ・フローを良くする方法としては、次のような方法が考えられます。

① 入金を多くする
(例)売上を増やす、助成金・補助金を獲得する、借入をする、生命保険を解約する、FC展開をする
② 入金を早くする
(例)現金決済にする、クレジットカードの入金時期を早める、掛売上をできるだけしない、掛売上を早めに回収する
③ 出金を少なくする
(例)コスト削減する、出金を伴わない節税をする
④ 出金を遅くする
(例)短期借入から長期借入にシフトする、できるだけ長期間で借りる、掛仕入にする、掛仕入の支払時期を延ばす、在庫を減らす

多くの飲食店オーナーは、キャッシュ・フローを良くするためには「売上を増やせばいい」「コストを削減すればいい」と考えがちですが、このようにその他にもたくさんの方法があります。
このキャッシュ・フローを良くすることが「財務基盤を強化する」方法の1つです。

次に、「3. 融資」は必要な時に必要なだけ理想的な条件で融資を受けることができるようにするということです。
ここで次の表を見てみてください。
実際の資金調達事例です。

  A社 B社 C社
店舗数 3店舗 5店舗 20店舗
融資額 20,000千円 20,000千円 40,000千円
保全 保証協会 プロパー プロパー
資金使途 設備 設備 運転
借入期間 5年 5年 7年
金利 1.9% 1.15% 0.65%
レベル 6 5 4

この「レベル」が各社の「資金調達力」をあらわしています。
このレベルが高ければ高いほど、「必要な時に必要なだけ理想的な条件で融資を受けることができる」状態に近づきます。これが「資金調達のカベ」です。

実際、この表の通り、レベルが上がれば上がるほど良い条件で融資を受けています。
ちなみに、店舗数が増えればレベルが必ず上がるというものではないのです。
このレベルが「どうやって決まっているのか」「どうやって上げることができるのか」については次回以降の連載でお話していきたいと思いますが、要はこのレベルを上げていくことも1つの「財務基盤を強化する」方法です。