マッチングプラス

飲食店の多店舗展開マネジメント

06 資金調達力のカベ
Profile 廣瀬 好伸(ひろせ よしのぶ)

公認会計士・税理士
株式会社ビーワンフード 代表取締役
飲食業に特化した「お金の専門家」として幅広くコンサルティングを行う。
飲食店経営者・店長向けに、セミナーや研修も数多く実施。
著書に『1店舗から多店舗展開 飲食店経営成功バイブル: 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』。

判断する人によって難易度は変わる

Aさんの例

Aさんは、1店舗目は日本政策金融公庫、2店舗目から4店舗目まではX銀行からの融資(すべて保証協会の保証付き)で資金調達して出店しました。
しかしAさんの会社の財務状況はそこまでいい状態ではありませんでした。
そんな中、5店舗目のいい物件が見つかり、それに必要な融資3,000万円をX銀行に申し込みました。
4店舗目までの融資で保証協会の保証枠をおおよそ使い切っていて、支店長としては5店舗目の融資は貸すのであればプロパー(保証協会の保証なし/無担保)で貸さなければなりません。
財務状況はそこまでいい状態ではないものの、支店長としてはAさんの会社に将来性を感じていたので、3,000万円という金額が支店長の決裁権限内(支店長の判断だけで融資できる限度内)でもあり、Aさんはほぼ希望通りの条件で3,000万円の融資を得ることができました。

Bさんの例

BさんもAさんと同じように1店舗目は日本政策金融公庫で融資を受け、2店舗目から4店舗目まではY銀行とZ銀行からの融資(すべて保証協会の保証付き)、5店舗目から6店舗目まではY銀行からの融資(プロパー)で資金調達して出店しました。
5店舗目から6店舗目のプロパー融資はけっこうすんなりといきましたが、次の7店舗目の融資を申込んだときに問題が起きました。
5店舗目と6店舗目が立ち上げから6ヶ月程度思うように売上が伸びず不採算が続いた結果、Bさんの会社の財務状況が大きく悪化、7店舗目の初期投資が5,000万円まで膨れ上がったこともあって融資審査は難航しました。
いままでは支店長の決裁権限内でしたが、7店舗目はそれを超えて本部決裁となってしまったために、これらの問題点が「カベ」として立ちはだかることになったのです。 結局、Bさんは3,500万円までしか借りることができませんでした。

この2つのケースを見たときに、どちらも財務状況はそこまでいい状態ではない点は共通していますが、大きく違うのは「誰が最終的に融資するかどうかを判断するか」で、Aさんの場合は「支店長」(支店長決裁)、Bさんの場合はAさんに比べて店舗数が多く融資残高も多かったので支店長の判断だけでは難しく、「本部決裁」でした。

一般に本部決裁の方が支店長決裁よりも融資の難易度は高くなります。

みなさん自身のことを振り返っていただいたときに、銀行の営業担当者はもちろん会おうと思えばいつでも会えますが、支店長はなかなか会えないでしょうし、本部の人となると会ったことがある方はおそらくいないでしょう。

裏を返せば、支店長はみなさんにほぼ会うことなく融資するかどうかの判断をしますし、本部の人はみなさんにまず会うことなく融資するかどうかの判断をします。

では、彼らは何を見て融資するかどうかの判断をするのでしょうか。