“安さ”に埋もれてしまった本来の魅力
このお店はマスコミにも紹介されました。“安くて”美味しいお店として。
しかし、そのことがかえってお店の経営を悪化させてしまいます。
もちろん一時はすごい反応でしたが、次第に“安さ”の方が目立つようになり、“美味しさ”が
伝わりにくくなってしまったのです。
“美味しさ”を人に伝えるのは意外と難しいもの。
伝えられる言葉はせいぜい「すごく美味しかったよ!」くらいじゃないでしょうか。
大半のお客さんは料理のプロでもなければ、グルメ評論家でもない。
“何がどう美味しいのか”を詳しく伝えるのは容易ではありません。
一方、2,000円という価格、これは分かりやすい。
「○○○と△△△に、☆☆☆までついて、2,000円!しかもクーポンでさらに1割引!」という
安さを売りにしたメッセージは、お客さんに明確に伝わったことでしょう。
特に、安いものが大好きな方たちに伝わります。
お店にはこういう方たちが、どんどん押し寄せてきます。
すると居心地の悪くなった常連さんは徐々に去っていってしまい、最後には、お店がもともと
来てほしかった方とは全く別種のお客さんに占領されてしまいました。
こうなって初めて、オーナーは愕然とします。
「こんなの俺の店じゃない!」。
それから、生みの苦しみを伴った、本当のお店づくりが始まりました。