マッチングプラス

失敗しない!出店ナビ
29 安ければ売れる?陥りやすい「価格のワナ」

土屋薫氏

集客UP塾 塾長
日経レストラン「悩み解決クリニック」専任アドバイザー
個店・専門店等、中小規模の既存店の業績アップに数多くの実績を持つ

ごちそう+縁起モノで市場をつかむ

一方、ちょっと高めの「とんかつ御膳」はどうでしょうか?
お手軽弁当に比べてマーケットが小さく、売るのにも手間がかかるはず。
ということは、競合も少ない。

日常的なエネルギー補給としてのお弁当ではなく、突然の来客や、我が家のイベント日の“ごちそう”感覚で注文されることが多い。つまり、ニーズは限定的ですが明確で強い。

“非日常”“ハレの日”のご飯と言っていいでしょう。
いつも注文するわけじゃないですが、こういう日は財布の紐も多少は緩むものです。

ただし、お店を開けて、すぐに売れたわけではありません。
ご相談を受けたのも、オープンはしたけど、手ごたえがイマイチなので何とかしてほしいということでした。

こういうお店は、特定の利用動機を明確に打ち出さないと、中々注文していただけません。
お店の売りは「とんかつ」。かつは勝つに通じ、昔から縁起物として根強いニーズがあります。

そこでまず、受験、就活、会社の年度末等々、勝負の時、縁起を担ぐ時にどうぞ、と打ち出しました。個人宅には地道にポスティング。地域の事業所・会社・工場は、事前にリストアップしておき、配達のついでに訪問してチラシを置いてくるよう徹底していただきました。

これでじわじわ売上が上向いてきました。

そして、オープンから4ヶ月後、一気にブレイクしたのです。
選挙があったので、注文の電話は鳴りっぱなしだったそうです。

さらに、そのしばらくあとに受験シーズンに突入、売上は一気に伸びました。
もともと品質には自信があったお店です。高い確率でリピートしていただけました。
これで一気にお店の知名度が浸透し、以後は好調な売上をキープしています。

お手軽弁当ではこうはいかなかったでしょう。

ふだんは食べられないB店の「とんかつ御膳」。手間がかかる分、大手には手が出しづらいマーケットながら、はっきりしたニーズがありますふだんは食べられないB店の「とんかつ御膳」。手間がかかる分、大手には手が出しづらいマーケットながら、はっきりしたニーズがあります